追手門学院教員研修 体験インタビュー2013

研修期間:2013年7月31日から8月21日
研修先:ホーソンメルボルン英語学校
質問にお答えいただいた先生:
桂先生(K)前田先生(M)若葉先生(W)

メルボルンの印象は?

W:僕は10年前に1度来ているんですが、都会だけど動物園や自然もある印象でした。でも今回、何よりも、行きかう人が違う言語なのが驚きでしたね。カナダやアメリカにも留学しましたが、オーストラリアが1番すごいという印象です。人々が様々な母国語を保ちながら英語で暮らしているというのが印象的でした。

otemon01M:僕はメルボルンに初めて来たのですが、来る前の印象はオーストラリアの第2の都市、くらいしかありませんでした。来てみたら外国人を外国人としてみる感じがしないのは印象的でしたね。例えばフットボールの試合を見に行く機会があったのですが、その時にもらったマフラーを帰りに巻いていたら、知らない人でも「今日どっち勝った?」などと話しかけてくる。とてもフレンドリーな都市だなと思いました。外国って特に都市部ではドライなイメージがありますが、ここでは人の温かさというものを感じましたね。

K:私は追手門学院小学校の国際親善交流プログラムで、ブリスベンに引率者として過去15回来ているのですが、メルボルンはブリスベンと違って都会だろうなと思ってはいました。確かにシティはにぎわっていますし、大きな都市ですね。日本よりは街は小さいかもしれないけれど、多国籍多人種なのがやはり印象的でした。買い物をしていても電車の中でも、「外国人」として見られているなという印象はあまりありませんでした。居心地のいい街ですね。ホーソンの教室でもエレメンタリークラスで、アラビック、インド、中国、香港、インドなど、多くの国籍の子供たちがみんなでアクティビティをやっていました。知り合って間もない子供たちが英語を学ぶという共通の目標を持って、みんなで仲良く学んでいるのがいいなと思いました。

オーストラリアの児童・生徒と日本の児童・生徒の違いは?

otemon02W:授業を見る機会が少なかったのであまりわからないのですが、ジュニア・シニアの学校でも授業風景は日本と全然違うんですね。話し合いやグループレッスンが多い。日本のように一斉に前を向いてレクチャー方式というわけではないのが印象的でした。日本の高校生と同じように、シャツがだらしなく出ていたり、授業中に立ち歩いたり、遅刻なども見られるのですが、ネガティブな意味だけじゃなくて、とにかく自由だなと思いました。逆にそういうネガティブな部分も広く見ている感じがします。教育が何を目的にしているのかという点に関しては、コミュニケーション重視なので、日本とはやり方も全然違いますよね。日本はある程度、狭い教室で大人数なので、ルールがないといけない。教育の成果は、例えば電車の中などでも子供が普通に話しかけてくれるなど、コミュニケーション能力の高さは確かに感じました。

自身のクラスの児童・生徒と比べてどうか?

M:子供なので基本同じだと思いますね。ただ、こちらの子供たちは、より自由が与えられているとは思います。僕は結構細かく注意するので・・(笑)机の配列や種類も、丸かったり大きかったりといろいろあって、基本授業は話しながら進めていく感じでした。しかしよく喋りますね。教育の成果なのか、国民性なのかわかりませんが。今回訪問した学校は、割と恵まれた地域にある学校だったので、そうではない地域も見て見たかったですね。

こんなに自由を与えて、授業は成立しているのか?とても興味があります。こういうコミュニケーション重視のやり方は、やる気のある子にはとてもいい方法だと思うんです。例えばホーソンメルボルンのセカンダリークラスでも、やる気のある子は積極的に試験などを受けてメルボルン大学を目指しているけど、そうでない子もいる。でもやる気のない子はしつけがある程度ないと、どうなってしまうのだろうと思いますね。基本的にどちらがいいとは言えませんが、「まずはきちっとさせる」という考え方がこちらにはないのはわかりました。

K:今回のオブザベーションだけではわからなかったというのが正直な意見です。環境のいい学校で、歴史もあり、追手門学院と同じ時期の創立の学校を見ましたが、子供の雰囲気や規模も指導スタイルも違いました。ただ、子供と触れ合う時間が少なかったので、子供たちの気質まではわからなかったです。姉妹校がブリスベンにありますが、その子たちを見ている限りは似ている部分、例えば抱えている悩みなどは万国共通かなと思いますし、他の先生方とのお話でもそれは感じます。

先生は違う?

K:たまたま今回会ったエレメンタリーの校長先生がすごく教育熱心だったんです。教材などをネットで買えるシステムを整えたり、学年会を開いて授業の目的や手法をシェアするという提案をしたり、校長が先頭に立って引っ張って教育改革に燃えていました。すごくパワフルで、教育の質や効果をあげるために熱心にやっていて、すごいなと思いましたね。

プログラムの率直な印象は?

W:こういう環境の中でのESLとしての英語教育に興味があるのですが、特に生徒のモチベーションや必要性はどうなのかなと。逆に日本ではどうか?というところなどを比較できてよかったです。こちらで学んだものを日本に適応できるかどうかどうかは、英語が日常的に必要か必要じゃないかということや、クラスサイズなども違うので難しいところだと思います。

多言語の環境で暮らすことで学習者の傾向は変わるか?

W:言語に興味は向きやすいと思いますね。例えば、違う母語を話す友達が身近にいたら、必要性も感じるだろうし、モチベーションは違ってくると思います。

今回のプログラムは座学が多いが、もっと実践的な授業を見たいなどの希望はあるか?

W:僕はTESOLの知識は来る前にある程度ありましたので、座学はレビューにはなりましたね。でも、やはり現地の学校に行く機会がもっとほしかったです。いいところだけを見せてもらったような感じはありますね。授業は数分のみしか見られませんでしたし、その数分で何が学び取れるかなというのは課題でした。うまくいっているところだけじゃなく、オーストラリアの日本語教育を含め、外国語教育において、コミュニカティブな教育の環境をどう整えるか、色々な学校を見て見たかったです。
またこちらではトピックを中心に授業を進めて、一定期間同じトピックでいろいろなアクティビティを取り入れる手法が一般的のようですが、その一定期間を一貫して観察できたら、全体的な成果や、優秀な生徒がどのくらい出るか、逆に落ちこぼれてしまう生徒がどのくらい出るかなどが見られてよかったと思います。

M:日本と全然違ってトピック中心で、文法中心の日本のやり方は否定されることもありました。僕自身はどうかな?と半信半疑でしたけど・・。このやり方を日本で採用すれば、しゃべれるようになるか?そんなこともないと思いますね。実際、日本語勉強している高校2年生の生徒に話しかける機会がありましたが、話ができるとは言えませんでしたし。こんなもんか、という思いも実際ありました。

でも来る意味がないのではなく、生徒にとって楽しい授業をしているかということは学べましたね。詰め込むボリュームが少なくても、やる気やモチベーション高めて、生徒自身が自分でやるように仕向けることによって、教育成果を見込む。これはすごく勉強になりました。オーストラリアはクラスサイズや方針なども違うので似たような環境の中国や韓国なども見てみたいですね。

otemon03K:私はこの研修は、2つの立場から受けていました。まずは、生徒・児童の立場。自分自身も英語に興味があって勉強していたこともあるし、自分が受けた教育と似た点や異なる点はあるのか。もうひとつは、教員の立場として、4技能をいかに授業に盛り込むか。言語学習として、聞く・読む・書く・話すを総合的に授業の中で練り上げるという意味で、今回の経験は国語や社会などにも応用できると思います。全部は無理でも自分が語学の学習法を知ることで勉強になりましたね。

また、追手門学院では小学校1年生から英語の授業をしているので、自分が生徒・児童の立場で楽しかったことを授業で生かせてもらうように提案できたらいいなとも思います。

日本で「英語は必要ない」と児童や生徒にいわれたらどう答える?

W:中学生とかはよく言いますね(笑)。言語学習はいろいろな目的がありますから、経験談を話して楽しさを伝えるようにしています。自分も、中学2年生で初めてオーストラリアに来て、言語も通じないところから始まり、もっと通じたらいいという思いがあって今があります。外国の生活は全然違います。いろいろな意味で、生き方や生きる幅が広がるということも伝えたいですね。

M:いるな~そういうこというやつ(笑)。まぁ僕なら、まず男子なら「かっこいい!」といいますね。モチベーションをとにかく保たせることが大事なので、オシャレもした方がいいだろうと。英語も同じで、喋れないよりも喋れた方がかっこいいだろうと。将来彼女の幅も広がるぞ、とか言ったりもします。実感がないから必要ないと思うわけで、なんとか実感させて、モチベーションの維持に結び付けたいんですよね。

極端な話、例えばALTもめっちゃカッコいい男性と、めっちゃかわいい女性が来たら、話したいという生徒のモチベーションは上がるんじゃないかな?(笑)まぁそれはさておいて、今回研修に来たのも、よりイメージしやすい話をしてあげられるかなということも理由の一つです。たとえば、多言語を話す人と話すと、ちょっとした話でもすごくおもしろかったりしますよね。

K:いかに楽しく学ぶか、話す必要があるかを気づかせるのが一番かなと思います。追手門学院では国際交流プログラムもあるのですが、そこに参加して友達ができたりすると、もっとその友達とコミュニケーションをとりたいと思うようになる。そういう子供たちが少しずつ増えていけば誰もが英語を好きになる環境ができるのではないかと思うんです。

現在、追手門学院の小学校はネイティブが4人加わり、授業の手法も昔と比べても大きく変わっています。例えば、授業の導入でビートルズの歌等を毎回歌っているのですが、低中高の学年を問わず子供たちが大きな声で歌うんですよ。先生の導入や教材の提案の仕方によって子供は変わると思います。

最後に、評価の仕方ほめ方の違いは感じたか?

W:日本語の授業を見て、オーストラリアはどちらかというと、参加が重視されていますね。先生の話を聞いてノートをとって、それも評価されて、ということでなかったです。確かに発言は多いですが、ノートは取れていないので、僕としては、「試験は大丈夫?」と心配になってしまいました。どうマネージメントしているかなど、深いところまではわかりませんけど。
ただ、最終的に試験が、スピーキングやリスニングもあるので、一貫性はありますね。日本でもアクティビティを通じて学ばせるのなら、評価も変わるべきだと思います。入試なども含め、検討が必要ですね。

otemon04M:オーストラリアは定期考査があんまりなくて、テストの結果もあまり重要じゃないようですね。それよりも日頃の活動が評価される。日本の試験中心の評価とは違います。これだけ違えばやり方が違って当たり前で、正直どちらがいいかはわからないですが、何を目指すかによって違うと思います。逆に日本でも評価の仕方が変わらない限り、内容を変えるのは難しいですね。

K:私は日本もオーストラリアもあまり変わらないなという印象です。テストの頻度に関しては、失敗した子供たちが次に頑張れるというポジティブな面もあるので、良し悪しですよね。日本はテストが多いが、それは逆にチャンスを子供たちにあげているということでもあります。テストが少なければそれだけ子供たちに責任がかかりますから。

今回、教職大学院のコーディネーターの方と知り合ったのですが、オーストラリアでも教員が自分の教授法を見直してきているようです。評価の研究はオーストラリアでも再検討されているんだなと感じました。

3人の先生方、それぞれいろいろ感じられた研修のようです。お忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。

インタビュー:鈴木 聡子(すずき さとこ)
経歴:東京女子大学、現代文化学部・言語文化学科卒業後、英語教員として約6年間公立・私立高校に勤務。
メルボルンエデュケーションセンターから、2011年に渡豪し、メルボルン大学、教育学部・Master of TESOLを修了。現在はメルボルンにてフリーのライターやコーディネーターとして活動中。