N.M. 様

メルボルン大学 大学院

Master of Applied Linguistics (TESOL)
(Coursework + Minor Thesis)
2008年1月~2009年2月

社会人の大学院留学

社会に出てから留学を決意することはとても勇気のいることですが、職務経験を生かして、より専門的な勉強ができるのでとても有意義だと思います。私は自分の経験から社会人の大学院留学という点で感想をまとめてみました。私の専攻は応用言語学でしたが、専門分野の違う方にとっても参考になれば幸いです。

留学前

・大学院留学のきっかけと目標
学生時代に英文科で言語学を勉強しアメリカの大学へ交換留学経験もあったため、英語に関係のある仕事がしたいと思い、新卒採用で英語テストの実施運営の仕事に就き4年半勤務しました。在職中は国内外の関連学会で米国本部の開発スタッフや大学の先生たちと接触する機会が多かったので、次第に運営ではなく学術的な調査研究の仕事をしたいと考えるようになりました。その会社では本格的な研究開発の部署がなかったので、一大決心をして留学の3か月前に退職しました。在職中からメルボルン大学がその分野で有名であることを知っていたので、迷わずメルボルン大学の応用言語学(Applied Linguistics)の修士課程を選び、英語教育やテストに関する専門的な仕事をするための具体的な知識やスキルを身につけたいと思いました。留学後の仕事のあてはなかったですが、同じ分野で研究職に就きたいと考えていました。

・出願
出願書類の締め切りの時はまだ在職中でしたので、仕事をしながら推薦状や成績証明書などの必要書類をそろえたり、IELTS受験をしたりなど、忙しい時もありました。しかし殆どの書類はインターネットやメールなどで取り寄せが可能ですし、出願書類はMECからまとめて送っていただき、無事に届いたかどうかのフォローもしてくださったので、働きながらでも問題なく準備できました。IELTSは週末などに公式教材を使って集中して勉強して備えました。

留学中

・履修科目選択
私の場合は、今後博士課程に進む可能性も視野に入れていたのと、周囲のアドバイスから、Minor Thesis(10,000語ほどの修士論文、2科目に換算される)は絶対に書こうと考えていました。すると必要科目数の8科目のうち、おのずと2科目は決まりました。残り6科目のうち4つを第1セメスターで履修し、第2セメスターは2科目とMinor Thesisでした。詳しい科目名は割愛しますが、第1セメスターに基礎的な科目(Research Method, Quantitative Method)を履修したおかげで、次のセメスターではMinor Thesisや応用的な科目に対応することができて効率が良かったです。ご都合によっては第2セメスターから留学を開始する方もいらっしゃると思いますが、第1セメスターから始めることを想定してカリキュラムが組まれているような気がするので、第1セメスターから始めるほうがスムーズかもしれません。

Minor Thesis(修士論文)

この論文は私のメルボルン大学・大学院留学のハイライトと言えます。この論文を書くか書かないは任意ですが、私は書いて本当によかったと思っています。論文を書くことにした理由は、
①社会人経験である程度専門分野の知識があったので、より高度なことに挑戦したいと思ったことと、
②1年の留学の集大成が形になって残ることによって将来のチャンスが広がると思ったから、です。
論文が出来上がれば、それを改編して学術誌に載せて、留学後の就職の際にも業績としてアピールできると思います。また、将来博士課程に進むという選択肢もできると思います。論文を書くのは簡単なことではなかったですが、大学院の先生たちはみんな協力的なので卒業後に専門的な分野に進みたいと思っている方にはぜひチャレンジすると良いと思います。

その他の授業

よく言われるように、海外の大学院は毎回の課題が非常に多いです。重要なのは、効率よく勉強することだと思いました。具体的には、社会人の仕事にも通じる以下の3点だと思います。

1.整理整頓
授業の資料がどんどん増えるのできちんとファイリングしないと頭の中が混乱します。

2.リソースをフル活用する
学校のLMS(Learning Management System)という全学生が使えるインターネットのツールで授業に必要な資料や図書館の本の検索や学術誌のダウンロードなどができるのでとても便利です。使い方はオリエンテーションの週に説明会があるのでそこで教えてもらえますし、適当に触っていても覚えることができます。

3. コミュニケーションをとる
先生たちとも日ごろからコミュニケーションをとって、早く名前と顔を覚えてもらうと何かの時には親身に相談に乗ってくれて助かります。また、授業ではよく2~3人のグループワークの課題が課されます。仲間と集まる時間が取れなかったり、意見が食い違うこともありますが、チームワークやリーダーシップという社会人にとっても必要なことを経験できる良い機会ですので、上手にコミュニケーションをとって前向きに取り組むといいと思います。

英語力

以前に留学経験があったことと仕事で英語を頻繁に使っていたので、留学中も特別な不自由はありませんでしたが、オーストラリアのアクセントになれるまで少し時間がかかりました。(でも大学ではアクセントの強い先生や学生はあまりいませんでした。)留学前にオーストラリアのラジオのインターネット放送などを聞いておけば耳を慣らせておくことができて良かったのかもしれないと思いました。また、会社を辞めてから留学するまでの3か月を利用して、アカデミック・ライティングなどを復習しておいたのがレポートや論文を書く上で役立ちました。

その他生活面一般

メルボルン大学周辺及びメルボルンの都心部は便利で暮らしやすいところです。治安もそんなに悪くはありませんが、やはり十分に用心したほうが良いです。具体的には、夜の一人歩きです。大学院の授業は、社会人の学生も授業に間に合うように夕方から始まる場合がほとんどなので、授業が終わる時間は夜です。夏は日が長いので良いですが、冬になると真っ暗なので、なるべく夜道を長時間歩かなくてもよい所に住むことをお勧めします。

休暇の過ごし方は人それぞれだと思いますが、メルボルンではどんな人でも自分に合った楽しみ方が見つかると思います。私の場合は料理とピクニックと美術館に行くのが好きなので、あまり遠出しなくても楽しめました。料理はマーケットやデパートの地下の食料品売り場で美味しい食材を買って料理するのが楽しかったです。マーケットはQueen Victoria Marketは大学に近く有名ですが、私は落ち着いた雰囲気のPrahran Market(シティーより電車で10分ほど)のほうが好きでした。ピクニックはシティ周辺のガーデンに食べ物や飲み物を持って行ってきれいな芝生の上でゆっくり過ごせます。美術館はシティーのNational Gallery of Victoriaで平日に夜のイベントをやっていて、入場料が安くなったり展示にちなんだ音楽やバーやレストランのサービスがあったりなど、大人が楽しめる良い企画だと思いました。
オーストラリアというと全体的にアウトドアなイメージがありますが、メルボルンはスポーツをする以外でも楽しめることがたくさんあるので、あまりスポーツをするのが得意ではない私には合っていたと思います。

留学後

Minor Thesisを書き終えて間もなくして帰国し、幸運にもすぐに希望の分野での仕事が決まりました。専門分野を勉強してより専門的な仕事をしたい、という当初の留学の目的は無事に果たされて、私のメルボルン大学・大学院留学は200%満足のいくものでした。特にMinor Thesisを書くことによって実績ができた点と、お世話になった先生方や仲間とのネットワークができたことは、今後の仕事をする上でもとても役立つと思います。
社会人経験を経た大学院留学を振り返ると、留学をする前に考えておくべきことは以下の2点だと思います。

① 留学後の計画をしっかり立てること。
キャリアアップのための留学ならば、留学後にやはり関連の仕事ができないともったいないと思います。私は運よく関連の仕事が見つかりましたが、できれば休職制度などを利用して同じ会社に戻るほうが留学後の仕事が保障されていて安心して勉強に打ち込めるかもしれないと思いました。
② 留学の目的を自信を持って答えられること。
1年はあっという間に過ぎるので留学前に具体的な研究テーマが決まっていないと寄り道・回り道をしてしまうかもしれません。自分の中で留学前にしっかり軸を定めておくと、効率よく勉強できます。

以上、社会人の大学院留学という視点で感想を綴ってみましたが、本当に1年は短かったとしみじみ感じます。でもその分充実した内容の濃い時間を過ごせて良かったと思います。2年前の私と同じように、会社で働きながら大学院留学を検討している方がいらっしゃったら、ぜひ実現させてほしいと思います。職務経験があるこそ得られるものが多いのが社会人留学だと思います。
最後に、MECのみなさん、メルボルン大学のスタッフ、そしてクラスメイト、論文の調査に協力してくださった日本人留学生のみなさん、そして家族や友達、私の留学生活を応援して協力しくださってありがとうございました。この場をお借りして心からお礼申し上げます。